農地転用の手続きには、農地法の許可申請と届出の2つがあります。今回のテーマは農地転用の届出。
許可申請と届出は、何が違うのか? 以下がポイントになります。
- 該当する農地の地域
- 期間(転用にかかる時間や転用のタイミング)
- 費用(行政書士の報酬)
- 必要書類
上記について許可申請と比較しながら、届出の手続きを解説していきます。
農地転用の届出に該当する農地とは?
届出は、転用したい農地が市街化区域内にある場合に該当します。
市街化区域とは都市計画法で指定された区域のこと。
この区域内の農地を転用するとき、手続きは「届出」になります。
(この区域でない農地は、転用するために農地法の「許可」が必要。
市街化区域について詳しくは最終章で説明します。)
都市計画法の詳細、区域や調べ方についてはこちらの記事で解説しています。
許可申請との違い①農地法届出の期間(転用までにかかる時間)
届出は、提出後およそ2週間前後で手続きは完了、転用を始めることができます。
許可申請の審査期間1か月に比べると、転用までの期間が短いと言えます。
またもう1つの特徴として、許可申請は提出に締切があるのに対し、届出書はありません。そのため随時、手続きが可能です。
では、手続きはどのタイミングでやるべき?
農地転用の届出:手続きのタイミングはいつ?
転用する農地について売買があれば、「所有権移転の前」がそのタイミング。
所有権移転には、(農地法届出の)「受理通知書」が必要になるからです。
※受理通知書については後述します。
農地を賃貸借や、使用貸借で転用するときは?
転用(工事の施工)前に、手続きをしましょう。
※農地転用の届出をせずに、転用(施工)を開始してしまうと無断転用になるので注意。
許可申請との違い②農地法届出の費用
農地法の許可と比べて、届出の費用は低コストになることが多いです。
行政書士に頼む場合の報酬が、低めに設定されているから。
下記は、行政書士事務所のホームページから得た平均的な価格です。
- 農地法届出 6~8万円程度
- 農地法許可 8~10万円程度
※行政に払う手数料(申請手数料など)はありません。(申請・届出自体は無料です)
農地法の許可だと、上記の金額にプラスアルファされるケースもあります。
案件によりけりですが、追加になる手続きや図面が必要だったりするので。
それに対し、届出は手続きや図面の追加がほとんどありません。
自分の勤務先事務所でも、農地転用の届出の報酬(請求総額)はほぼ6万円でした。
行政書士事務所の転用に関する請求について、詳しくは下記の記事にまとめています。
許可申請との違い③農地法届出の必要書類
届出のときに添付する書類を下記に挙げます。(代表的な書類です。案件や申請先によって変わるので、追加書類があるかもしれません。)
- 土地全部事項証明書
- 位置図
- 案内図
- 公図
- 計画図(配置図、平面図、立面図)
- 委任状
※住民票が必要なところもあります。
許可申請との違いは、「資金証明書が不要」という点。これは依頼人にとって負担減です。
融資証明は発行手数料がかかるし、何より用意するまでに時間がかかる。
許可申請では資金証明書が必須なのですが、融資の稟議が下りるまで時間がかかり、結果的に転用が1か月遅れてしまった案件もあります。
届出はこうした影響を受けないので、スケジュール通りに手続きを進めやすいです。
各書類の詳しい説明や、許可申請に必要な書類などはこちらの記事で確認できます。
許可申請との違い④手続き完了の書類(受理通知書)
届出と許可では、手続き完了時に交付される書類も違います。
届出~転用にかかる期間は2週間程度、と前述しました。
届出を提出して約2週間後、「受理通知書」が発行されます。これは手続きが完了したことを証明するもの。
(さきほど所有権移転に必要と説明した書類です。)
※許可申請の場合、申請書を提出して約1か月後に許可証が発行されます。
許可と届出の相違点を表にまとめ(届出は許可より手続きが簡素なのはなぜ?)
以上、農地転用の許可申請と比較しながら届出について解説してきました。
この2つの違いを下記の表にまとめます。
該当地域 | 手続き~ 転用まで | 手続きの タイミング | 費用(報酬) | 必要書類 | 手続き完了の書面 | |
農地法届出 | 市街化区域 | 2週間 | 随時 | 6~8万円 | 資金証明が不要 | 受理通知書 |
農地法許可 | 上記以外 | 1か月 | 締め切りあり | 8~10万円 プラスアルファ | 資金証明書 必要 | 許可証 |
届出のほうが、許可申請よりも手続きが簡素。その理由は?
それは、届出は「市街化区域」が対象だから。少しだけ、冒頭の都市計画区域の話に戻ります。
「市街化区域内」とは市街化を勧める場所。つまり、積極的に市街化したいから農地転用の手続きも簡素化しましょうという趣旨なのです。
(転用=市街化につながる→簡素化することで後押しする)
このように簡素化される届出だからこそ、代理申請者には気をつけるポイントが。
それは、書類の準備~提出までの時間をできるだけ短縮することです。
届出は随時提出できるので、できるだけ早く受理通知書がもらえるよう迅速な提出を心がけましょう。
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