無断転用とは

応用編

無断転用とは、農地法の許可を受けずに農地を別の用途で使用してしまっている状態

を指します。

自分の経験上、農地法手続き案件の2割3割くらいがこれに該当していました。

農地法手続を仕事にしていくなかで、

絶対に遭遇するはずのテーマなので、今回はこの無断転用の実態について詳しく取り上げたいと思います。


意外と多い無断転用

無断転用と聞くと、農地を太陽光発電にしていまっているとか、

他人に売って家が建っているというような

あからさまケースを思い浮かべるかもしれませんが、

そのような分かりやすい目立つ無断転用は、あまり遭遇しません。


他人に売買する場合は、登記手続きが必要になり、

登記手続きに農地法の許可証が必要になるため、

農地法についてある程度の知識のある不動産会社などの仲介もあって

正当な手続きを経ていることがほとんどです。


無断転用に多いのは、

農地の所有者が自家用車を駐車場にしたり、

物置や倉庫を設置したり

といったケースです。


駐車場といってもコンクリート敷とかではなく、

休耕地になっている草むらに、車輪の後がついている程度

の状態であったりします。


農地の三分の一くらいのスペースを使って不要品の三輪車や廃材が置いてあったり、

小さな倉庫が建ててあったり、

でも一部では畑として作物も育っている

という状況もありました。


こういった状態について、可能な場合は申請前に

  • 不用品をどかす
  • 駐車をやめる

などの対応をしてもらい、無断転用と認定されずに済む場合もありますが、

無断転用とみなされるかどうかは

農業委員会が現地確認をした時点でどう受け止めるか、次第です。


無断転用が発覚するケースとは

前章で取り上げたような無断転用は非常に多いです。


4年前、とある市の農業委員から、

無断転用農地のリストを見せてもらったことがあります。

9~10ポイントの文字で埋められたA3用紙が、十数枚の束になっていました。


定期的に担当地区を調査しているそうですが、

はがきや電話での勧告・指導などはしていない、と話していました。

対象が多すぎて、費用と労力が追いつかないようでした。


そのくらい多い無断転用地のなかで、

是正をすることになるのは、次のようなケースに限られます。

  1. 無断転用している農地を他人に売る契約が成立した
  2. 農地転用申請をする農地があり、別の無断転用農地について指摘があった


1のケース

このパターンが一番多いです。

耕作ができなくなった農地を駐車スペースや物置にしていたら、

買いたいという人が現れて売ることにした、

売るために(登記するために)農地法の許可が必要になった、

という流れです。

これは無断転用を是正する意図があるわけではなく、

転用申請することになった農地が結果的に無断転用に該当した、

というケースです。


2のケース

これは、農地を売ることになり転用申請をしたら、売り主の所有農地のなかに「無断転用農地がある」と指摘を受けるパターンです。

農家の息子や孫が家を建てるため、農地を貸す(使用貸借)ことになった際、

その転用申請をしていたら、他に所有する農地に無断転用している農地があり、

指摘を受けた、というパターンもあります。


2のようなケースでは、

本来転用した農地に対する許可は、無断転用農地の是正を条件とする、

という厳しい対応をとる市もありました。


無断転用についての是正手続とは

無断転用をしている農地を是正しなければならないとき、

その方法としては、

  1. 農地法の申請
  2. 非農地証明

の2つがあります。


一般的な方法は1の農地法の申請です。

これは、通常の申請書や添付書類に加えて、「始末書」という書類を追加して申請するものです。

申請の締め切りや審査期間、許可証の内容などは、通常の申請と変わりません。

始末書の詳細や、申請書の注意ポイントなどは、別記事でまとめます。


2の非農地証明については、

一定の要件を満たした場合に、農地でないことの証明を受けるものです。

その要件とは、

  • 農地法の施行前(H27.10.21)から非農地である
  • 自然災害により農地への復旧が困難となった
  • 農地法施行後に農地だったが、耕作不適な土地で10年以上耕作放棄され農地復旧が難しいと判断される
  • 農地法施行後に許可を受けず転用し、10年以上経過し、農地に復旧することが著しく困難(物理的・経済的)である

などです。


かなり厳しい要件であり、

なかには非農地証明という手続きに対応していない、という市もありました。

農地法の申請ができない特別な事情がある場合に限り、この手続きが対象になってきます。


無断転用が多い理由

なぜ、無断転用している農地が多くなってしまうのか。

これについて自分が推測するには

  1. 転用手続きが必要であることを知らない
  2. 転用手続きが必要なケースに該当していると気づかない
  3. 手続きが必要と知っていても罰則が無いのでわざわざやらない

の3パターンがあると思っています。


1.転用手続きが必要であることを知らない

農地法についての知識が無い人も多いです。

農家さんを集めて農地法手続き講習、みたいなことをやっているわけではないので

自分の土地を自分で使うのに、手続きが必要なんて思わなくても仕方がない

と思う部分もあります。


農地法手続きについて取り締まりが厳しくなってきたのは最近、とも聞きます。

先代のときから自由に使用していた農地を相続した場合など、余計に

手続きが必要とは考えないのが普通かもしれません。


十数年も駐車場や物置に使っていた農地について、突然

「無断転用していますね、手続きをしてください」と言われたところで

本人は罪悪感というよりは

今更・・・と面倒事に遭遇してしまった感を抱いているような印象でした。


転用手続きが必要なケースに該当していると気づかない

転用するときは手続きが必要ということは知っていても、

転用=他人に売ったり貸したりするとき

と認識している人もいます。

自分の農地の一部に自家用車を停めたり、

不用品を置くスペースを作ったりする程度で

「転用」に該当するとは思わなかった、という声もよく聞きました。


3.手続きが必要と知っていても罰則に処せられることが少ないため無視している

農地法の手続きが必要なことを知っていて、

自分のケースが該当することもわかっていても、

自分の土地を自分で使うのに、どうして余分な手続き費用を払う必要があるんだ、

と思っている人もいます。


確かに、地目が農地でなければ、自分の土地をどう使おうと本人の勝手なので、

農地であるばっかりに余分な手続きが必要になってしまうのは

気の毒にも思うこともあります。


無断転用をした場合、

  • 3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる場合がある(農地法64条、67条)
  • 原状回復の命令がされる場合がある(農地法51条)

とされていますが

実際に処罰や命令受けたケースを聞いたことも、

公表を受けたこともありません。


なかには処罰を受けた人もいるかもしれませんが、

交通違反のように一般的、日常的な取り締まりがないのは確かです。

法令遵守したほうが出費が増える、と考えると

手続きをすることが馬鹿馬鹿しく思える人がいてもおかしくはないでしょう。


1と2のケースでは、

市から指示があったことを伝えると、

「そうか、知らなかった」と素直に手続きをとる人が多いですが、

3のケースについては、

こちらから「今は農地法の取り扱いが厳しくなっているので、手続きをしてもらえませんか」と頼んで手続きに協力してもらう、という感じでした。


以上にみてきたように農地法の申請を多く扱っていると、

かなりの確率で無断転用農地に出くわすと思います。

そのような場合には、無断転用をしてしまっている申請人の事情も考えながら

行政との調整を図っていくことが

代理申請者に求められるスキルの一つです。


行政と違反者、両方の立場を考え、

物事の側面を見ながら申請と向き合うバランス力のある人が

きっといい先生や担当者になる、と信じています。

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