農地を一時的に使用し、使用期間が過ぎたら返却する場合は、一時転用と言われる許可が必要です。
一時転用として、農地法4条または5条申請し許可を受けることになります。
この記事では、一時転用の特徴や通常申請との違いとして
- 対象になる農地の種類
- 必要書類や固定資産税の課税
- 具体的な事例
についてまとめます。
一時転用とは?特徴は「期間」と「復旧義務」
一時転用は、転用する期間が3年以内に定められています。
転用期間が最長3年、というのが通常申請と異なる最大の特徴。
3年以内に転用を終了した後は、農地への復元が想定されています。
転用後は、申請前の状態に復旧させる義務があるため、下記点で通常申請と取り扱いが異なります。
- 許可対象になる農地の種類
- 固定資産税の課税
- 申請書類
上記について、1つずつ解説します。
通常申請と一時転用の違い①転用できる農地の種類
以下は通常の農地法4条・5条についての許可基準。
- 青農地の転用は不可
- 第一種農地は難しい
しかし、一時転用では青農地や第一種農地についても許可を受ける可能性があります。一時転用は農地へ復旧されるから。
農地の種類と、転用見込みの判断基準については
「【農地の種類とは】転用の難易度に影響?転用できない農地も」で詳しくまとめています。
良かったら参考にしてください。
通常申請と一時転用の違い②固定資産税の課税
課税地目と課税額の変更は、土地所有者が心配する点です。
通常の農地法申請では、転用計画に合わせて「宅地」や「雑種地」などの地目に変わります。
その結果、農地で課税されていた時と比べて課税額が上がります。
しかし一時転用では農地に戻ることが想定されるので、一時転用許可後も、固定資産税の課税地目は変わりません。
課税地目が変わるタイミングや、課税額については、申請先の税務課へ確認しましょう。
実際に確認し具体的な案内をすることにより、申請者の不安を無くし信頼を得ることができます。
通常申請と一時転用の違い③申請書類
転用の終了後に農地復旧が想定されているため、農地法の申請前後に農地復元に関する書類が必要です。
申請時に下記書類を求められることがあります。(市町村によって一部不要の場合もあります。)
- 農地復元誓約書
- 現状回復計画書
- 耕作管理計画書
転用後の必要書類は、下記が挙げられます。
※申請先市町村によっては、上記以外の書類が必要になるところもあります。
進捗状況報告は、通常の農地法申請でも提出は義務ですが、自分の経験では一時転用のほうが、提出についての追求が厳しい市町村が多かったです。
※進捗状況報告の提出状況については、下記の記事で詳しく書いています。
【転確・進捗状況報告】地目変更との関係、提出しないリスクも?
一時転用が適用されるケースとは
一時転用は、基本的には一時的な使用で目的が達成される場合に限って認められます。
具体例として下記2つのケースで掘り下げていきます。
- ケース1 工事期間内に使用する資材置き場
- ケース2 接道の無い土地への工事車両進入・停車スペース
ケース1 工事期間内に使用する資材置き場
工事現場は、都度変わります。現場付近に合わせて資材や現場小屋を配置しなければなりません。
公共工事を請負う建設業者などは、案件を受注後に工事準備に入ります。その際、現場付近に資材や現場小屋の設置が可能な土地が必要。
ある程度の広さが確保できる更地は、地目「農地」の休耕地が多い。
しかも農地は、雑種地や宅地に比べて賃料が安い傾向にあります。そういった事情から、このようなケースの一時転用は多く経験しました。
ケース2 接道の無い土地への工事車両進入・停車スペースとして
太陽光発電の敷地は、下記の理由により接道が無くても管理が可能です。
- 日常的な管理は赤道や農道など、細い通路を使って進入できる
- 隣地に自宅があり、住宅敷地から進入できる
太陽光パネルの設置の際、工事車両の進入方法さえ確保できれば問題ありません。
発電敷地と道路の間に農地があるときは、一時的に農地を工事車両の進入・停車場所として転用するケースが多いです。
まとめ
一時転用の特徴として下記2点をお伝えしました。
- 3年以内の期間で転用を終了させる計画が対象になる
- 転用終了後には農地として現状回復する義務がある
その特徴は、申請業務について以下のように反映されます。
- 申請と許可の対象になる農地の幅が広い
- 固定資産税の課税地目が変わらない
- 必要書類として、現状回復に関する計画や復旧報告が求められる
一時転用のその後(3年後)について、こんな記事も書いています。
興味のある方はチェックしてみてください。
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