転用する農地に仮登記がついていることが、たまにあります。
仮登記がついている場合、土地全部事項証明書に記載されているため、確認できます。
仮登記がついていても、農地法申請をして許可を受けることが可能です。
その場合に、通常の申請に加えて、必要になる書類があります。
この記事では、仮登記がついている場合に必要な書類について紹介します。
仮登記には、同意書が必要
仮登記がついている状態のまま、農地法申請をする場合、
仮登記権者の「同意書」が必要になります。
申請先によっては仮登記権者の「承諾書」という名称の場合もあります。
どちらも、
「仮登記権者が、
仮登記をしている土地について、転用申請者が農地転用を申請することについて、
同意(または承諾)している」
ことを確認する書類です。
同意書の様式例
同意書(または承諾書)の様式例として、自分が作成したものを掲載しておきます。
申請先によって、様式があるところと、任意のところがあると思います。
任意の場合は、
- 申請地
- 申請者
- 仮登記権者の氏名、住所
- 仮登記権者が農地法申請をすることに同意している旨
が記載されていれば、基本的には問題ないはずです。
仮登記権者の押印が必要になりますので、
押印回収までの期間を逆算してスケジュールを立てましょう。
同意書の趣旨
仮登記は、いずれ本登記をして所有権移転する意思があったということです。
そのような仮登記権者の存在がいながら、全く別の第三者が転用申請をしようとしている、
ということは、その土地を巡ってトラブルに発展する可能性も考えられます。
それは民法上の当事者間の問題ではありますが、
農業委員会としても、問題になりそうな事情を未然に防ぐ目的で、
立場が不安定である仮登記権者に、あらかじめ同意を得ておくことを求めています。
この記事では、仮登記を抹消しない状態での申請について、説明していますが、
農業委員会としては、
可能であれば仮登記を抹消してから、農地法申請することを推奨しています。
補足:条件付所有権移転仮登記とは
農地である土地についている仮登記は、
この条件付所有権移転登記が多いと思います。
農地法の許可を受けないと、所有権移転ができないため、
許可を得ずに売買契約が成立したときに、この条件付所有権移転登記をします。
この場合、「条件付」の条件=農地法の許可を取得したら
なので、
農地法の許可を受けたら、条件を満たすことになり、本登記ができます。
それまで、登記ができない代わりに、この条件付仮登記が設定されます。
補足:抵当権との違い
農地法申請条は、「土地に設定されている所有権以外の権利」として、
仮登記も抵当権もひとまとめにされている感があります。
市町村によっては、
抵当権も仮登記も同じ様式の同意書を使用しているところもあります。
この2つの権利、権利の内容以外に大きく違うのは、
第三者に対する対抗力の有無です。
抵当権 = 第三者に対する対抗力がある
仮登記 = 第三者に対する対抗力は無い
仮登記は第三者に対して権利を主張することはできませんが、
- 複数の仮登記権者が本登記をしたとき、先に仮登記をしたものが優先される
- 本登記をすれば、仮登記後に購入した人に対抗できる場合がある
といったメリットがあります。
最後に
仮登記がついている場合、
仮登記権者の同意を用意し、仮登記権者の押印が必要になるため、
早めの対応が必要になります。
土地全部事項証明書を見るときに、仮登記がついているか、
必ず確認するようにしましょう。
前章で抵当権との違いを記載しましたが、
仮登記と抵当権で、それぞれ同意書(承諾書)の様式が別々の定められていると、
対応する書式を間違えやすいので注意しましょう。
抵当権についてはこちら「抵当権が設定された農地を転用するときは」でまとめています。
よかったらこちらも参考にしてください。
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