農地転用の手続きを頼むと、どのくらいのお金がかかるか? 気になりますよね。
一方で手続きする側である行政書士先生も、報酬の設定に悩まれると思います。
この記事では、農地法手続き報酬の相場について、自分の勤務先事務所の金額設定を例に説明します。
農地転用の請求書の内容(報酬と費用)
農地転用手続きの請求書の内容は、大きく2つに別れます。
- 報酬
- 費用
案件によっては、上記に加算されるプラスアルファの業務があります。(詳しくは後ほど説明。)
1の報酬は、行政書士の能力に対しての技術料。
- 農地法申請書の作成
- 添付書類の収集・作成
2の費用は、公的証明書の立替金など。第3章より詳しく解説します。
細かい話ですが、請求書の項目が報酬と費用に分けられるのは
- 報酬には消費税がかかる
- 費用(立替金)には消費税がかからない
という点で、総額の計算をするときにも分かりやすいから。
平均的な農地転用の報酬は?
行政書士事務所や不動産会社のホームページでをチェックすると、多いのは下記の設定。
・農地法届出 6~8万円程度
・農地法許可 8~10万円程度
※エリアを絞らず行政書士事務所のHPをチェックしました。行政書士会の標準報酬も参考にしています。
自分の勤務先だった事務所の請求額も8万円程度です。
ですが、この報酬金額は平均的な参考価格。
申請の煩雑さや、審査の厳しさなどに地域差があるため、地域ごとの相場も違うはず。
報酬の最低額と最高額の差はかなり大きいと推測。この記事を書く前に、30件以上の行政書士事務所の報酬を比較した結果↓
- 最安値は3万円~
- 最高値は14万円~(しかも図面作成料は含まない)
農地転用「費用」の内訳について
費用とは、下記のような立替金。
- 申請人本人に代わって取得した書類や
- それにかかる経費
これはどの事務所を選んでも、自分で申請しても、発生する料金。事前に見積りをとって確認することをお勧めします。具体的には
- 公的証明書の発行手数料
- 土地改良区の証明料、決済費用
- 交通費
などです。
農地転用の費用①公的証明の手数料
1.申請地に関する証明書
- 土地全部事項証明書 600円/筆
- 地図証明書(公図) 450円
- 耕作管理証明書(農地法3条のみ) 300円/市
筆数が多いと、土地全部事項証明書の手数料が増えます。
※筆数が多いときは、報酬にも「筆加算」なる追加料金があります。詳しくは後述します。
※耕作者の所有する農地が、複数の市にあると耕作管理証明書の手数料が増えます。
2.住民票、戸籍の発行手数料
- 住民票 300円~350円程度
- 戸籍 300円~750円程度
郵送請求の場合は、定額小為替と切手代が追加されます。
農地転用の費用②土地改良区の証明料、決済費用
土地改良区の費用は、その改良区次第ですが、自分の申請区域を参考例にすると
- 意見書発行手数料 1000円前後
- 決済費用 100円~180円/㎡
上記は見積もりの段階で特に確認すべき内容。
決済金があると報酬+数万円の上乗せになるので、前もって依頼人に伝えるのが誠実です。
農地転用の費用③交通費
自分の勤務した事務所では、農地転用で交通費は請求していません。
農地転用の担当エリアは50km圏内と広めなので、遠い場所は当然、費用対効果が低くなります。
(余談ですが、産廃収運の申請で他県に行くことがあります。そのときはさすがに交通費を請求します。また、遠方で1日がかりになるときは、交通費に加え日当を頂いたりします。)
ホームページを見ると、農地転用の交通費(実費)を請求する事務所もありました。
基本的には農地転用は、申請地に近い行政書士事務所がやるもの。遠方の行政書士事務所を選ばない限りは、交通費の請求があったとしても大きな額にはならないはずです。
農地転用の請求額は、プラスアルファ業務で差額10万違う?
報酬に加算される業務の主なものを挙げます。
- 図面作成料
- 土地改良区関係書類作成料
- 筆加算
- 関係法令の手続き(道路・水路占用、太陽光、埋蔵文化財、緑化計画など…)
上記の手続きが1つ加わった程度だと、2、3万円のプラスで済みます。
10万円近くプラスになるのは、下記のような場合。
- 上記の1~4のすべてが該当する
- 2の図面に高度な内容が求められる
- 4の手続きが複数ある。または高度な内容の手続き
1つずつ、詳しくみていきます。
農地転用の追加料金①図面作成手数料
図面を別料金にしている事務所は多いよう。内容によっては10万前後プラスされます。
設計事務所や、工事業者から図面作成料が加算される事務所の方が多いとも聞きます。
実際ホームページで「図面作成料を別料金」と明示する事務所を確認できます。
図面と一口に言っても色々。
- 横断面図
- 求積図
- 擁壁に関する図面
- 緑化計画図
いずれも申請書よりも時間や技術を要します。
自分の勤務した事務所では、農地転用の図面作成料は請求しません。
道路(水路)占用や開発許可など、高度な図面については請求しますが、事務所内に作成できる職員がいるので料金については融通が利きます。
事務所内にそのスキルが無いと、図面を別の事務所に依頼することになります。その場合はどうしても図面作成料が加算されます。
農地転用の追加料金②土地改良区の関係書類の作成料
これは意見書を発行してもらうための申請書作成料です。
事務所次第ですが、自分の勤務先事務所では、1~2万円。ほかの事務所も5万円以内に収まるところが多いと推測します。
農地転用の追加料金③筆加算
これも何筆以上から加算するかは、その事務所次第です。
自分の勤務先では、加算があるのは10筆近くあるときで、費用は2万円程度。
筆加算が該当するのは、宅地分譲や建売分譲の転用や、大型店舗の新設案件です。
筆数が増えると、
- 委任状に記載する土地や依頼人が増える → 押印回収も大変
- 公図や配置図が広範囲になる → 図面作成に負担
など申請にかかる手間も時間も膨らみます。
農地転用の追加料金④関係法令の手続き
農地転用の内容により、幅広く手続きがあります。下記はほんの一例です。
- 緑化計画届出
- 埋蔵文化財届出
- 景観条例届出
- 太陽光ガイドライン届出
参考までに、以下は自分の勤務先事務所の料金です。
- 緑化計画の届出(緑化計画図の作成料込み)5万円程度
- 太陽光のガイドライン届出 5万円程度
- 埋蔵文化財・景観条例は、無料~2万円以内
まとめ:農地転用の報酬は高いのか?
以上、農地転用の請求額と内容について解説しました。下記にまとめます。
農地転用の請求金額
- ざっくり、平均価格は8~10万円程度
請求金額の内訳
- 報酬=農地法申請書・添付書類作成・収集
- 費用=証明書手数料など
- プラスアルファの業務=他法令に関する手続き
請求額を左右するのは、3の追加業務あり・なしによっても、大きく変わるということ。
一般・個人の方は、農転の手続きの依頼は一度切りのことも多いと思います。
数万円という見積書を目にし、何にこんなかかるんだ?と思われるかもしれません。
手続きの料金については、総額だけを気にする人がほとんどです。
内訳を見ることで、具体的にどのような業務をしているのかを知っていただき、そのうえで「農転手続きの報酬は高いのか」を判断していただけると嬉しいです。
下記の記事では、農地転用の報酬に対する自分の考えを書いています。良かったら参考にしてみてください。
行政書士の方におかれては、料金設定に対する苦労や悩みがあると思います。
決して相場や価格競争だけに囚われ過ぎないでください。報酬は、自分の能力や経験、知識や努力に対する金額です。
ぜひ付加価値やより質の高いサービスなどで、利益率を上げていってください。
そのための、役に立つスキルや情報を提供していきたいと思います。
良かったらまたこのブログを見に来てください。
コメント