農業委員会が、計画の適正を判断するとき一番重視するのは、「隣地や周囲の農地に影響が無いか」ということ。
その判断材料として、重要なポイントが「排水先に問題がないか」です。
この記事では、
- 排水先を重視する理由
- 排水先を自分で確認する方法
について取り上げます。農地法の申請にあたり必ず抑えておきたい内容です。
排水計画が重要な理由
必ず雨水と生活排水の排水先を確認するのは、こんな事態を避けるため。
排水がうまくいかないことで、申請地だけでなく周囲の土地にも影響が出ます。
上記1のように直接的な影響もあれば、上記2のように間接的な影響も広範囲に起こります。
排水はそれだけ「隣地や周囲の農地に影響」する要素。
この2点は必ず、農地法申請のときに図示することになっています。(排水計画図については後述します)
- 雨水はどう処理するのか
- 雑排水(生活排水)はどこに流すのか
※転用計画によっては、雑排水が発生しないケースもあり。
雨水と雑排水の排水先について、確認する方法を説明していきます。
【排水先の確認方法】①雨水の排水先
雨水は申請地に接する道路側溝に排水するのが基本。
確認する方法としては、現地に行き前面道路に道路側溝があるかを見る。なければ、前面道路を横断した先(反対側)に側溝がないか確認。
道路側溝は、フタがついたものもあれば、むき出しの水路もあります。
※たとえ農業用の水路だとしても雨水の排水は問題ありません。
※他人敷地を通って「建物から生じる」雨水の排水は、法律上できないとされています。これについて分かりやすい説明があるので良かったらご覧ください。
公益社団法人 長野建築士会
http://www.nagano-kenchikushikai.org/soudan/case/sourin06.pdf
側溝が見当たらないケースについては後述しますが、まず設計元に排水経路を確認しましょう。
【排水先の確認方法】②雑排水(生活排水)の排水先
雑排水(生活排水)は、下水が通っている場所については、下水へ接続するのが基本です。
下水管(本管)へ支管でつなげる工事をします。
下水が通っていない場所については、浄化槽を通して道路側溝へ排水します。
農業用の水路には雑排水を流せないところもあるので、注意が必要。
【浄化槽の放流先がない?】排水できないケースや、それを事前に知る方法で詳しく解説しています。
以上みてきたように、雑排水の排水方法は「下水が通っているかどうか」で対応が変わります。
その下水道の配管状況を知るには?調査方法を説明します。
下水が通っているか?配管状況を調べる方法
簡易的なやり方と正式な調査があります。簡易的な確認方法は、この2つ。
- 現地を見に行き、近くにマンホールがあるか?
- 市HPに下水の計画図があれば、それを確認
申請地の隣地まで、マンホールが続いていれば下水道が通っている可能性が高い。
見渡してマンホールが無いときは、浄化槽を使用して側溝に排水する可能性あり。
隣地の住宅に浄化槽が確認できたり、その処理水が前面道路側溝へ排水されているのが確認できることもあります。
また市によっては、下水道の整備状況をホームページで公開していたりするので、検索してみましょう。
上記の方法で判断できないときは、正式な方法で確認します。
このとき、申請地の場所がわかる資料として、案内図(住宅地図)と公図を持参します。
下水道の埋設状況がわかる図面を見て、場所を照らし合わせて確認します。
有料ですが(数十円ほど)、下水道の図面写しをもらうこともできます。
自分の経験では、簡易的なの方法で足りることが多く、正式な調査をするのは稀でした。
申請地に排水する側溝がないときは?
3つのケースが考えられます
- 道路を横断した先の側溝へ排水する
- 他人所有地を通って付近の側溝へ排水
- 地下浸透のみ(雑排水がなく雨水のみ)
※3の対象になるのは、駐車場や太陽光発電の限られたケース。
1については現地確認で予測はつきますし、一般的な方法なので問題なし。
2と3は独断できないし、トラブルも想定されるので対策についても確認が必要です。
いずれも依頼主や設計元にまず確認しましょう。
それぞれの事例については、また別記事で紹介したいと思います。
設計元に聞けないの?排水先を自分で確認する理由
設計元に確認するのが確実だし早いのでは?と思いますよね。
確認申請や水道工事の手続きが受理されなければ、建設できない。当然、排水経路は確認しているはず。
でも答えがかえってこないことがあります。
こちらの力量を試しているのか? めんどくさいのか、選択肢が複数あって未決定なのか? 意図は読めません。
その場合に自分は、こちらで「現地を見たところ、排水先は○○でしょうか?」と聞くことにしています。
設計元から情報がもらえるよう、日頃から
- 図面を依頼するにあたり、排水先の情報が欲しいことを伝える
- 継続的に取引する設計元には、農転審査に排水先の情報が重要と伝えておく
など、関係性を築く工夫も有効です。
「設計元」がない申請も。排水の情報をつかむスキルは大事。
4条申請に多いのですが、個人用の駐車場や簡易倉庫など、設計元が無い計画もあります。
その場合の雨水処理は、依頼主と一緒に考えることが必要です。
案件の数を重ねると、排水先の検討がつくようになってきますが、依頼を受けて一番気になるのは、いつも排水のこと。
設計元から情報をもらえれば確実ですが、計画の適正を自分で判断するためにも、排水の確認方法や判断力は大事なスキルです。
排水先が確認できたら、「排水計画図」を作成しましょう。
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