「事業用の駐車場」目的で転用する依頼は多いですが、その審査はだんだん厳しくなる傾向に。
詳細は、「事業用駐車場への転用が、他の目的よりも審査が厳しい理由と背景」でまとめています。
厳しい審査を突破するためには、農業委員会を納得させる「転用の必要性」や理由を提示。申請内容に説得力を持たせる必要があります。
駐車場の必要性を事業者に確認するのもいいですが、「申請上の理由にならない答え」も多い…。
どのように転用の必要性や理由を考えるのか。自分の経験した案件を2つ、例にしながら解説します。
【案件①】社員寮の駐車場(増設の件)
寮の駐車場は部屋数分の駐車台数が、既に確保されています。
追加が必要な理由を、仲介業者に確認すると
との返答...。
農地法申請上、「すでに寮生分の駐車場があるのに増設する必要性」がほしい。
納得できる説明を自分で考えることにしました。
実際に寮の駐車場を見に行くと
一人暮らし用の部屋であるのは間違いなく、部屋数分の駐車場はありました。でも、気になる点も。
バイク置場が無く、駐車場の区画に停めている。何か所か、そんな光景がありました。
また自転車置き場には自転車がいっぱいでした。
実地から得た情報を理由づけに活かす
実地観察をふまえて、増設の必要性をこのように説明することに。
- 駐車場をバイク置場として利用する人が、車も持つことに。もう一区画必要との要望が〇件くらいある。
- 既にいっぱいになっている駐輪場に、自転車が置けずに困っているとの声がある。実際、玄関前に置かれた自転車が〇台以上ある。
- 寮の管理車両や、寮生の家族・友人が来たときの駐車スペースが無い。来客用駐車場の要望が多い。
これらの事情を申請書の理由や、事業計画概要書に書き込みます。
具体的な数字があるとより説得力があります。現地確認した際に下記を確認。
情報を反映させます。この方法で、何とか許可を得ることができました。
【案件②】従業員駐車場(移設の件)
今まで賃貸していた土地の契約が終了し、新たに農地を従業員駐車場として使用することになりました。
以前の土地よりもその農地は小さく、そこに隣接する農地も所有者は同じでした。
農地所有者は「2筆とも買ってほしい」と交渉しましたが、会社の社長は1筆のみの購入を希望。
この状況で農地法申請をするために悩んだのは、以前の駐車場より面積が小さくなるのに、駐車区画に不足が無いことについての説明。
実際、10台分くらいの駐車面積が縮小されることになるからです。
しかも、従業員名簿を提出するため、従業員が減ったという理由は不可。
社長に会いに行く。会社の求人情報にヒントが。
従業員は減っていないのに、駐車台数を減らせる理由…。なにかヒントが欲しい。
仲介業者の了承を得て、押印書類を直接社長へ届けに行くことに。
社長の話を聞いて、わかったこと。
- 購入費や固定資産税を考え、1筆のみの購入を希望していること
- 従業員の内訳は、製造の作業員が多い
- 工場の敷地内にも、数台なら車両を停められそうだということ
さらにもう少し情報が欲しくて、ネットでその会社の求人が無いか探しました。すると、現場作業員の求人があり、
- 勤務体制が交代制であること
- 3交代制と2交代制の両方があること
がわかりました。
駐車場の兼用(入れ替え時間)について詳しく記載
情報収集により勤務時間にバラつきがあることを知り、一つの区画を勤務時間が異なる従業員が併用できると考えました。
それぞれの入出庫時間と台数を割り出します。
- 3交代制の車
- 2交代制の車
- 事務職員の車
一番車が多いとき、また兼用できる時間帯と台数を考えます。
併用時間や、併用する区画数を配置図に記載。そして、兼用する区画について、
と記載しておきます。
従業員が増員した場合の追及に対し、「工場敷地内のスペースで対応する」という返答を用意しました。
この方法で、審査で特に追及なく許可を得ることができました。
転用の必要性を考えてもわからないときは
机の上で悩んでいても、なかなか理由付けが浮かばないことも多いです。自分の経験したケースもそうです。
そんなとき、試して頂きたいのは、事業・実態の内容や事業者のことを調べるということ。
店舗や工場に出向き、外から観察するだけでもヒントがある。
行政書士が直接、依頼人に会うのを嫌がる仲介業者もいますが、押印書類を届けるなど自然な理由をつけて社長や事務担当者に会いに行く。
社内の様子を見るのもいいです。
会社のホームページが無いときは、求人情報から仕事の内容を調べてみる。
そこまでしても、どうしてもわからないときは?
「必要性」について仲介業者に協力を仰ぎましょう。事業者や仲介業者に、理由づけを頼むときは
と努力を伝えると、より理解や協力が得やすいです。
もし、転用計画についての説得方法で悩んでいる人は、今回紹介したアプローチも試してみてください。
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