今回は、下水が整備されていない区域の話。
生活排水は、浄化槽を使って周囲の水路(側溝)に排水することになります。
水路には、浄化槽の排水ができる水路と、できない水路があることを知っていますか?
法的な根拠や基準の話ではありません。
地域の取り決めや近隣住民の反応が、大きく影響することもあります。
そんなことが?思う人もいるかもですが、実際に転用を断念したケースも。
どんな場合に排水ができないのか?
排水できない水路の確認方法についてお伝えします。
農業で取水となる水路は、排水不可
水田が広がる場所には、水を取り込む水路があります。
農地への取水用の水路は、排水できないケースが多いです。
それは、生活排水が流れ込んで水質が変わり、耕作に影響が出ることを心配しているから。
水路を利用する農家や、近隣住民などが、「この水路は取水用だから、排水は不可にしよう」と取り決めをします。
取り決めといっても正式な規約はなく、慣習的なもの。
水路下降の住人から抗議、転用をあきらめた事例
排水先地点から、800メートルほど下った水路に近い住民が排水に反対してきたことも。
その案件は、結果的に住宅を建てるのを断念しました。隣地の反対は無く、農地法手続きも済んでいましたが...。
昔から住んでいる住民は、その水路に生活排水を流しているのに…。排水に反対する理由は、はっきりしませんでした。
反対を押し切って、浄化槽の排水をしても法的な問題はありません。周りを無視して家を建ててしまうことも可能。
ですが、近隣トラブルになることも考え、断念する人もいるのです。
浄化槽の水は、そんなにも水質を変えるのか?
そもそも、汚水を浄化し、放流できるようにするのが浄化槽。
適切な設置と管理をしていれば、基本的には水質に影響は無いと考えられています。
※詳細については一般社団法人 全国浄化槽団体連合会サイトを参照
国内の浄化槽は、下記のチェックを経て設置されます。
- その構造や容量などについて、国土交通省の認定を受ける
- 新築する際に、建築確認申請で浄化槽の仕様について確認あり
- 浄化槽法で保守点検や定期検査が義務付け
詳細については、環境省 浄化槽サイトより
点検や検査を行ったうえで正しい使用をすれば、水質に影響はないけれど。違反や不適切な管理があれば、水質に影響する可能性も…。
排水の可否には、明確な基準がない
浄化槽の排水を流していい水路と、ダメな水路について明確な法的基準はありません。
建設管理課や農林課に「排水可能か」尋ねても、はっきりした答えは返ってきません。
たいていは、
と言われます。
排水できない水路の確認方法
明確な法的基準がないと言われても、排水できないなら事前に知っておきたいもの。
排水不可とわかっていれば、土地の契約や転用申請など、無駄な支出と時間をかけずに済みます。
100%正確では無いですが、目安となる確認方法が2つ。
- 農地の取水になっているか現地確認
- 自治会長に聞く
1つずつ具体的に解説します。
現地確認で、水田の取水状況を見る
そこそこ連なる田に流れる水路については、取水しているか確認。
水路幅が通常の側溝よりも広いと、取水用の可能性が高いです。
取水の状況を確認しやすいのは? 雨の日や、その翌日の水量が多い日です。
農転の仕事では、排水確認で雨の日やその翌日の現地確認がよくあります。
くれぐれも視察は気をつけてください。
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晴雨兼用なので、真夏の現地確認で熱中症対策にも。
季節的に水が少なく、取水しているかわからない場合もあります。
そのときは、自治会長に聞いてみましょう。
自治会長に確認する
「転用計画があり、生活排水をこの水路に流して問題ないですか?」とストレートに聞いてみましょう。
下記について、ご存知の自治会長が多いです。
ただ、自治会長でも予測できないのは、住民の一部が個人的に猛反発するケース。
これは、事前に知り得ないのでどうしようもありません…。日頃から反対している人を知っていれば、教えてくれるはず。
実際に自治会長に聞いてみた
自分も申請案件について、自治会長に聞きに行ったことがあります。
現地確認の際、排水先が農業用水路だと気づいたから。この水路に排水できないんじゃないか...?という予感は的中。
と明確な返答をもらいました。
結果的にその案件は、ポンプアップして別の水路に排水することに。
コストはかかりましたが、トラブルなく計画は実行されました。
排水は計画そのものを左右する
浄化槽に限らず、排水は農地転用の審査で重要なポイント。
適切な排水ができないと、農地への影響や近隣トラブルにつながるためです。
排水問題は、計画そのものを左右するほど大きな要素です。
申請地が浄化槽の排水であるときは、特に注意が必要。
面倒でも、「排水予定の水路は排水可能か?」確認や情報収集をしておきましょう。
申請案件の排水先がよくわからない、というときは下記の記事も参考にしてみてください。
農地転用の排水計画:排水先の確認方法(下水調査や側溝がないときの排水方法など)
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