今回は、都市計画法に規定される都市計画区域や用途地域について取り上げたいと思います。
農地法では無いですが、
- 農地区分や許可見込
- 申請か届出か
などの判定基準となる重要な情報であり、申請に深い関わりがあります。
都市計画区域とは
街の構造は、
- 都市計画区域
- 都市計画区域外(順都市計画区域とそれ以外に分けられます)
に分けられています。
都市計画区域とは、簡単に言うと都市として整備していくことを定めた区域のことです。
区域ごとの計画については、都市計画法の定めや規制に沿って設定されます。
区域は一般的には県が指定しますが複数の県にまたがる区域については、国土交通大臣が指定することとなっています。
3つの都市計画区分
都市計画区域は、大きく3つの区分に分けられます。
- 市街化区域
- 市街化調整区域
- 区分区域非設定地域(非線引き区域)
- 積極的に市街化を進めていく計画区域 = 市街化区域と、
- 市街化を極力抑えて農地保全などを行っていく計画区域 = 市街化調整区域
この2つが対になって一つの区分になります。
政令指定都市以外は、この区域設定は任意であるため設定のない市もあります。
区分区域非設定地域とは、その市街化区域と市街化調整区域の区分が定められていない地域
のことをいいます。
用途地域とは
用途の混在を防ぐことを目的として、都市計画法により、
- 住居地域
- 工場地域
- 商業地域
などのように計画・配分して設定した地域地区のことです。
住居の多い地域では、住環境を守り
工場または商業が発展している地域では、経済活動の利便性を図る。
このように、地域ごとに適正な環境を作っていくために計画された区分です。
用途地域は、①都市計画区域と②順都市計画区域に設定されます。
市街化区域は、用途地域を定めることとなっています。
それに対して、そのほかの都市計画区域と順都市計画区域については、
「定めることができる」とされているため、用途地域の指定が無い場合も多いです。
用途地域の地域区分
用途地域の地域区分は、下記のように細かく設定されています。
- 低層住居専用地域 第一種
- 低層住居専用地域 第二種
- 中高層住居専用地域 第一種
- 中高層住居専用地域第二種
- 住居地域 第一種
- 住居地域 第二種
- 準住居地域
- 田園住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
それぞれの地域の特徴を簡単に解説します。
住居地域について
低層住居専用地域
低層住宅の良好な住環境を守るための地域で、小中学校や診療所、小規模な公共施設も建設可能。
≪第一種≫ 店舗に関する規制も厳しく、コンビニは不可、住居を兼ねた小規模の日用品店程度しか許可されていません。
≪第二種≫ コンビニの建設はOKなど、一定条件を満たした150㎡までの店舗が建設可能です。
中高層住居専用地域
中高層(3階建以上)住居の良好な住環境を守るための地域です。中規模の学校や病院、公共施設の建設が可能です。
≪第一種≫ 一定条件のもと500㎡までの店舗について建設可能。
≪第二種≫ 一定条件のもと1500㎡までの店舗や事務所の建設が可能。
住居地域
住居の環境を保護するための地域。
≪第一種≫ 一定条件のもと3000㎡までの店舗、事務所、ホテルなどの建設が可能。
環境への影響が小さい小規模な工場も建設可能。
≪第二種≫ 一定条件のもと10,000㎡までの店舗、事務所、ホテルなどの建設が可能。パチンコ屋やカラオケボックスもOK。
準住居地域
道路や自動車関連施設などと、住居が調和した環境を保護するための地域。
第二種住居地域に建設可能なものに加えて、小規模な映画館や車庫、倉庫も建てられる。
田園住居地域
農地・農業施設と低層住居が調和した環境を保護するための地域。
農業関連資材を置く倉庫や、一定条件のもと500㎡までの農産物販売店舗の建設が可能。
商業・工業地域について
商業施設
性風俗関連の店舗を含むほとんどの商業施設、高層ビルの建設が可能。
準工業地域
軽工業など、環境悪化の恐れのない工場、住宅、商店の建設が可能。
工業地域
積極的に工場の利便を図る地域で、工場なら限定無く建設可能。住宅と店舗も建設できるが、学校や病院、ホテルの建設は不可。
工業専用地域
積極的に工場の利便を図る地域で、工場以外のものは建設できない。住宅の建てられない唯一の地域である。
それぞれの地域を色分けして地図に反映させ、各自治体が販売しているのが都市計画図です。
都市計画と農地転用との関わり
都市計画区域や用途地域は、農地転用とどのように関係してくるのでしょうか。
下記2点が挙げられます。
- 転用したい農地について、手続きが「申請」になるか「届出」になるか、の判断基準になる
- 転用計画(内容)が、その地域の「指定用途に合っているかどうか」で転用の見込みがある程度わかる
順番に考察していきます。
都市計画によって、「申請」か「届出」かが決まる
農地法4条と5条の申請書には、「市街化調整区域その他区域の別」を記載する欄があります。
市街化区域と市街化調整区域の区分は、農地法上「申請になるか、届出になるか」についての線引きになります。
- 市街化区域=届出
- 市街化調整区域=申請
これについては「農地法届出とは」で詳しくまとめています。
その地域の用途に転用計画が合わなければ、転用見込は無い
転用計画(建設するもの)が、申請地の「用途地域の指定内容に合っているか」を考えましょう。
これは、転用見込みの判断材料の一つになります。
例えば転用計画が個人住宅のとき、申請地が工業専用地域以外であれば転用の可能性はあると判断できます。
住居地域に住宅を建てる転用であれば、不許可にするほうが難しいとも考えられます。
店舗や工場は第一種低層住居専用地域に建てることは不可であり、
店舗や工場の規模や内容によっては、住居地域や工業地域でも立地困難な場合があります。
農地法以前の問題ですが、このような依頼があれば「転用の見込みは無い」という判断がすぐにできます。
上記の例は少し極端で、実際は大きな事業ほど事前に調査・計画されているため、
用途地域に当てはまらない転用計画の依頼がくることは、あまりありません。
計画の適正や周囲の状況など、個々のケースの諸事情によって、転用の可能性は変わります。
用途地域だけで転用見込みを判断することは、当然できませんが
農地の種類や、計画の適正について判断するための一つの重要な指標になっています。
申請地の基礎情報をおさえるときは、都市計画区分や用途地域の確認もお忘れなく。
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