請求書を渡したのに、報酬が振り込まれないということがあります。
成果に対して報酬が無ければ、辛いですしビジネスが成り立ちません。
未払いの請求先に支払ってもらうには、どのようなアプローチがいいのか。
かつての勤務先である法務事務所での実体験をもとに、催促の方法や気をつける点についてまとめます。
支払い期限が無い場合、いつから「未払い」?
自分がいた事務所では、請求に期限を設定していませんでした。
支払期限が無いと、報酬の入金時期にバラツキが出ます。
いつから「未払い」とするか、が難しいところですが、目安として請求日から3か月経過した案件は、再請求候補にします。
経営を考えれば、1か月過ぎたら請求したいところです。
でも会社によっては、「〇日締めの翌月振込」のように取引先への支払日を決めているところがあります。
締め日によっては、翌々月の振込になる可能性もあるので、3か月をめどにしています。
支払いを催促する前に、気をつけること
前述した、締め日による翌々月振込の可能性に加えて、下記の点も注意が必要です。
- 未払い案件に仲介業者がいるときは、仲介業者にまず確認する
- 「払わない」のではなく、「払えない」可能性も考慮する
1の仲介業者がいる場合については、請求を催促をすることで
請求先と仲介業者の関係に悪い影響を与えるリスクがあります。
再請求をしてよいか、何か支払いが遅くなる事情があるのかなど事前に仲介業者へ確認しましょう。
2の「払えない」場合に催促をしても入金は難しいです。
相手の心証を損ねないように、強い文言や高圧的な姿勢は避けましょう。
継続的な取引関係にある相手が未払いの場合、請求には特に配慮が必要です。
未払いの請求(回収方法):段階的に支払いを促していく
未払いにも色々な事情があります。「うっかり支払いを忘れてしまっていた」や
「大きな額の入金予定があり、それを待って支払うつもりだった」場合など。
「払うつもりがあるけれど遅くなってしまっている」人に法的措置を持ち出すと、かえって逆効果になりかねません。
相手の対応を見ながら段階的に請求の仕方を変えていくやり方をお勧めします。
自分がいた事務所では、2段階の対応をとっています。
ステップ①未払い報酬の請求文書(メール)を作成(例文あり)
まずは未払いの事実を伝え、支払いをお願いするというスタンスで請求書を郵送します。
請求書に「再請求」と明記し、再請求をした日付も記載します。
送付状(添え状)の文面はこんな感じにしています。
○○様(御中)
お世話になっております。
下記の案件をご依頼いただきましてありがとうございました。
- 依頼内容
- 請求金額
- 請求日付
こちらにつきまして、未だ請求金額のご入金が確認できておりません。
再度、請求書をお送りいたしますので、〇月〇日までにご対応よろしくお願いいたします。
本書と行き違いでご入金頂いております場合には、何卒ご容赦ください。
これで効果が無いときはステップ2に移行します。
※下記については、このステップ1を2、3回繰り返したり、電話でお願いしたりすることも。
- 支払いを待ってほしい、と連絡があった場合
- 継続的な取引先
ステップ②未払い料金(報酬・費用)について督促状を出す(例文)
ステップ1を実行しても入金が無ければ、内容証明で督促状を郵送します。
催促と比べて督促は強めの文言で、法的措置をとる可能性についても触れます。
書き方は下記のようにします。(例では拝啓の挨拶を省略し本文のみ記載しています。)
督促状
何度かご連絡しております請求書№○○の件、期限の〇月〇日を過ぎましたが、いまだ入金が確認できておりません。
つきましては〇月〇日までにお支払い頂けない場合には、法的措置も検討いたします。
ご対応よろしくお願いいたします。
なお、本状と行き違いにご入金いただきました場合には、ご容赦願います。
感情を排除した、事務的で丁寧な文面にしていますが、送付先との関係が悪化する可能性は高いです。
督促状を送るケースは、自分がいた事務所ではほとんどありませんでした。
それでもダメなら法的措置
ステップ2の効果も無い。
それでも請求額を回収したいというときは、弁護士に相談し、訴訟を起こして裁判所に支払いを命じる判決を出してもらう方法もあります。
自分がいた事務所では、こうした法的措置をとったことはありません。
法的措置にかかる費用は、回収すべき報酬額を上回るためです。また、時間と労力もかかります。
貸倒(損金処理)について。「どこまで追及するか」は、費用や労力と相談
自分が勤務していた事務所では、ステップ2のケースは少ないと言いました。
ステップ1で全部回収できているのではありません。
それ以上は追及しない=貸倒れとして損金経理としているのです。
報酬が支払われないとやり切れない気持ちになりますが回収できるまで追及することは、得策ではないこともあります。
法的措置の費用、内容証明の手配や電話連絡の時間と労力。
取り立てのような業務は気苦労も大きく、伝え方に悩む時間で、1件でも多くの依頼をこなすほうが費用対効果が大きい場合もあります。
ただ、依頼の多い事務所はこうした切り替えが簡単ですが、少ない事務所では痛みが違うはず。
影響が大きい場合は、ステップ2まで踏み込んでいいのではないでしょうか。
事前に未払いを防ぐ対策3つ
未払いを防ぐために、下記3つの対策が考えられます。
- 着手金をもらう
- 許可証と報酬を引き換えにする
- 長期的な依頼内容のときは、数回に分けて請求
1の着手金は、未払いの多かった外国人の就労ビザ取得の案件について適用していました。
2の方法は、自分がいた事務所では検討したものの実行はしていません。
というのも本来、委任契約の業務は成果報酬ではないので、許可を取得できなくても報酬が発生する案件もあるからです。
今後、貸倒れが多い業務分野があれば実行するかもしれません。
3の方法は、半年以上かかる土地開発関係などでよく使用しています。期間や申請段階などで区切りをつけた請求は、大きな費用や立替金があるときに有効です。
許せない。でもだからこそ、感情と切り離す
ずっと入金が無く督促の連絡をするとき、
とイライラすることがありました。
請求をあきらめて、貸倒れの損金計上をするとき。
このまま泣き寝入りするなんて相手の思うつぼなんじゃないかと悔しくなりました。
この許せない、という気持ちは当たり前の感覚だと思っています。
でも自分の経験上、感情的になってする仕事はミスが多くプラスの影響はありません。
未払いという不条理に、これ以上の引っ張られないように「許せないからこそ感情と切り離そう」と考えています。
依頼件数が多くなるほど、未払いにも多く遭遇します。
真摯に仕事をしていても、誰もが経験することだと思うので対応に悩んでいる方の参考になればと、今回テーマにしました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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