宅地分譲と建売分譲。
農地法においては、事業者の意向で自由に決めることはできません。
下記のルールを意識しておく必要があります。
- 建売分譲=どの農地でも可能
- 宅地分譲=農地の場所によってはできない場合がある
上記について、
詳しく説明していきます。
どちらの申請になるかは都市計画で決まる
冒頭で話したように、農地転用では
①宅地分譲ができる農地
②宅地分譲ができない、建売分譲で転用する農地
に分かれます。
判定基準は、都市計画法で定められた用途地域。
用途地域の指定あり/なしによって、下記のように判断します。
- 用途地域の指定がある区域=宅地分譲が可能
- 用途地域の指定がない区域=建売分譲でないと、転用できない
用途地域の指定がない区域が、宅地分譲不可となる理由については後述します。
用途地域とは、住居地域や工場地域など、地域ごとの適正な環境づくりのために計画された区分のこと。
詳しくは「都市計画区域と用途地域について」という記事で解説しています。
申請上の建売分譲と宅地分譲の違い
農地法の申請上、建売分譲と宅地分譲はどんな違いあるのか。下記の表にまとめました。
書類作成や添付書類の面で、宅地分譲のほうが簡易的。いくつか違いがありますが、一番重要なのは資金証明です。
資金証明書の金額差は、事業者にとって負担の差
建売分譲は、建物建築費があるので、宅地分譲よりも多くの資金が必要。
資金証明書の証明額も建売分譲の資金証明 > 宅地分譲の資金証明
区画が多ければ多いほど建築費用分の差額は大きい。証明する金額が大きくなると、銀行の審査も厳しくなります。
その結果、証明書を手配する事業者の負担大に。
といった声を聞きます。
【実態】申請は「建売」、売買は「宅地分譲」
事業面で考えて、建売は費用がかかるのに売れ残りのリスクも大きい。
建売でなく、宅地分譲にしたいと考える事業者も。
建売分譲として農地法の申請をした土地が、実際には宅地分譲として売買されている実態も多くあります。
農地法はなぜ「建物付」にこだわる?
建売にすると事業者の負担は増えるのに、なぜ宅地分譲に制限があるのでしょうか。
農地法の許可にはこんな条件があるから。
必要性が認められる場合に、
必要最低限の面積で転用すること
転用計画は適正であること
用途地域が「住宅地域」なら、宅地化が見込まれている地域なので宅地分譲は問題になりません。
しかし用途地域の指定がないとき、この許可条件が光ります。
- 宅地分譲される土地に、どんな建物が建つのか?
- 建築面積は必要最低限か?(建ぺい率を満たすのか)
宅地分譲では、計画の適正を判断できません。
そのため用途地域の指定がない農地は、具体的な計画が定まった建売分譲で農地法の申請をします。
一部の適用除外を除いて。
一部の適用除外とは、
という特例措置のこと。
建物条件付売買の特例措置
用途地域の指定のない区域では、建物分譲=建物条件付売買が原則。
でも下記の要件を満たすと、宅地分譲が認められることになりました。
(農林水産省農村振興局長通知 平成31年3月29日 30農振第4003号)
宅地分譲で許可を受けるための要件(すべて満たすこと)
- 転用する農地について、転用事業者と土地購入者が土地売買契約を締結すること。
- 建設業者※1と土地購入者が一定期間内(おおむね3か月以内)に建築請負契約を締結することを誓約すること。
- 上記2の建築請負契約を締結しなかった場合、転用予定の農地について売買契約が解除される旨が当事者間の契約書に規定されていること。
- 農地転用事業者は、転用予定の農地について全てを販売することができないと判断した場合、売れ残った土地については自ら住宅を建築すること。
※1 転用事業者または転用事業者が指定する建設業者
特例措置で、宅地分譲は増える?
農地転用の担当者としての見解ですが、特例措置を利用した宅地分譲はそれほど増えないと考えています。
満たすべき要件が厳しく、事業者負担が大きいから。
売れなかった残地について、住宅を建築することを確約させられる点で、建売分譲と性質があまり変わらないように思います。
従来の「申請は建売、実態は宅地分譲」でやり過ごすという事業者が多いのではないでしょうか。
ただし、「申請のみ建売→実際は宅地分譲で取引」の実態が追及されるようになれば、特例措置の利用状況も変わってくるかもしれません。
今後の動向にも注目したいと思います。
分譲目的の転用については、こんな記事も書いています。
コメント